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春一番のそらち野菜!「雪割りなばな」のシーズン到来! (北海道・滝川市)

おいしい野菜が食べたい。

数ヶ月にわたって雪に閉ざされる、北海道・空知地域の冬。
そんな北海道でも、今の時代、スーパーに行けば季節を問わず様々な野菜を手にすることができます。とってもありがたいですね。
それでも、冬も終盤に近づくにつれ、

おいしい地物野菜が食べたい。

という思いが強くなります。

冬場は、玉ねぎやじゃがいものほか、越冬キャベツや雪の下大根など、一部を除くほとんどの野菜が本州産。
はるばる北海道まで長旅をしてきた野菜たちは、最新の冷蔵・保存技術を持ってしても、どことなくお疲れ気味のように感じるわけです。(まぁ人間だって、長旅すりゃ疲れますわな。)

贅沢を言っているのは、よーくわかっているんですよ。
それでもやっぱり。

おいしい地物野菜が食べたあぁ~い!!
 

その名も「雪割りなばな」。

こういう時こそ、これを使わなくては。
ということで、じゃん!
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そう、2年前、この「そらち・デ・ビュー」で制作した「そらち野菜ハンドブック」です!
空知産のイチ押し野菜を、地域との関わりや生産者さんのストーリー、旬の時期、美味しく食べられるグルメスポットなどとともにご紹介しています。

えーと、春一番に食べられる野菜は…
ありました!その名も「雪割りなばな」。

「雪割りなばな」とは、菜種を食用に品種改良したもの。中空知エリアの滝川市の特産品なのです。
滝川市といえば、日本有数の作付面積を誇る菜の花で有名なまち。
5月半ばを過ぎると、市内・江部乙地区を中心に、丘陵地を色鮮やかな黄色に染める菜の花の畑が広がります。
 
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滝川の菜の花は、眺めるたけじゃないのね。それはもう、今すぐにでも

食べたあぁぁぁぁぁ~い!!

ということで、さっそく滝川市へ行ってみましょう!
 

雪割りなばながきっかけで…感動のエピソード

まずお邪魔したのは、JAたきかわ。
販売部特産販売課の佐藤怜子さんに、雪割りなばなのあれこれを聞いちゃいました。
 
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―雪割りなばなは、いつ頃から生産しているのですか。

佐藤さん 最初に栽培を始めた農家さんでは、1989年(平成元年)から栽培されています。
2002年(平成14年)に、雪割りなばなを生産する農家さんが集まって「JAたきかわなばな研究会」が発足し、その後、今の「JAたきかわなばな生産組合」になりました。現在、11戸の農家さんが出荷しています。

-生産量はどのくらいでしょう。

佐藤さん 昨年の出荷量でいうと、3月下旬の初出荷から5月末の収穫終了までの間で、約2,800キログラムでした。

-主な出荷先は。

佐藤さん 地元では、JAたきかわの農産物直売所「菜の花館」のほか、滝川市場へ出荷していて、そこから市内の飲食店や学校給食などへ販売されています。そのほか、札幌・旭川の市場や生活クラブ生協、ホクレンくるるの杜(北広島市)へ出荷していますので、札幌市やその周辺、旭川市内で取り扱っている店舗があると思います。ちなみに、くるるの杜へは期間中2回のみの出荷なので、あれば「ラッキー!」と思って手に取っていただけると嬉しいです。
 
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〔JAたきかわ農産物直売所 菜の花館〕

 
―そういえば以前、「道の駅たきかわ」でも見かけました。学校給食にも登場するのですね。いいなぁ、その給食、食べてみたい。春一番の地物野菜、おいしそうです。どんな特徴があるのでしょう。

佐藤さん 種をまくのは前の年の秋です。雪の下で糖分を蓄えて育ち、ビタミンCやカルシウム、葉酸が豊富です。それに、苦味や青臭さがありません。実は、私の子供も葉物野菜が苦手でしたが、なばなは食べることができて、これをきっかけに葉物野菜を克服することができたのです。
 
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―…(感動)。

佐藤さん 茎から葉までとても柔らかくて、和洋中どんなお料理・調理方法にも合いますよ。収穫期間が短いですが、店頭で見かけたらぜひご賞味いただければと思います。

おいしいだけじゃなく、美容や健康にも良さそうです。(最近、「美容」と「健康」という言葉に弱いのよね。)
でも、春とはいえ、まだまだ朝夕は冷え込む時期。どうやって育てているのかな。これはぜひ、雪割りなばなの畑を見てみたいな。
 

「雪割りなばな」、誕生と生産の舞台裏。

ということで、佐藤さんに案内をお願いして、滝川市内で雪割りなばなを生産している中野義治さんをお訪ねしました。
中野さんは何と!滝川で最初に「雪割りなばな」の栽培を手がけた農家さんです。
さっそくいろいろ伺ってしまいましょう!
 
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―中野さんが最初に「雪割りなばな」を栽培したと伺いました。挑戦しようと思ったきっかけは。

中野さん 滝川で5月下旬に咲き誇る菜の花は「菜種」で、いわゆる「なたね油」を取る品種で、食用ではありません。でも、かつて「(菜種の)春の芽は食べられる」と親たちから聞いたことがありました。もう30年以上前になりますかね、「菜の花のおいしい品種がある」と聞いて、とても興味がわいたのです。当時、Aコープで三重県産のなばなが売られていたのを見て、いろいろ調べたものの、結局「東北以北に種は出荷しない」と言われてしまいました。

―今もスーパーの野菜売り場で、たまに「菜の花」を見かけますが、たいていは本州産です。寒冷地には向かない品種なのでしょうか。
 
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〔こんなパッケージで販売されています〕
中野さん そうですね。そこで、滝川市にあった北海道立中央農業試験場の植物遺伝資源センターの協力を得て、東北の農業試験場の協力を仰いだり、「きざきのなたね」という搾油用で耐寒性の強い品種を研究していた人に話を聞きに行ったりしました。そうした中、札幌市内の研究機関で、その頃新たに登場した「はるの輝き」という、食用としておいしい品種の寒冷地試験を実施していることを知りました。その種を分けてもらって植えたのが「雪割りなばな」の最初です。

―そんな誕生秘話があったとは、驚きです。

中野さん 栽培方法だけじゃなく、いろいろ工夫しましたよ。パッケージはもちろん、「雪割りなばな」というネーミングも。
 
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〔パッケージには菜の花のイラストが〕
―あれ?てっきり、そういう名前の品種なのかなと思っていました。

中野さん ある人のひと言にヒントを得て、「雪割りなばな」という名前に決めたのですよ。種は秋にまいて、雪の下で越冬します。で、翌年2月の20日前後でしょうかね、ハウスのビニールを張ります。暖房は使いません。そうすると3月になってから雪を割って姿を現すのです。

―それで「雪割りなばな」。特徴と季節感をうまく表現した名前なのですね。そういえば、昨年12月、滝川市内は大雪に見舞われましたよね。生育に影響は出なかったのでしょうか。

中野さん 雪は大丈夫でしたが、2月に最低気温がマイナス20度を下回るような低温の日が続きました。その影響でしょうか、この春は雪解けが早かった割には、生育が遅いように感じています。今年は平年並みの3月22日から出荷しています。
 

さて、気になるお味は。

いろいろお話を伺っているところへ、中野さんの奥様が雪割りなばなのお浸しを出してくださいました。もちろん、この日の朝に収穫したものです。
沸騰したお湯に入れて1分半、さっとゆでてお浸しにするのがおススメの食べ方なのだそうです。
では。さっそくポン酢をかけて、いっただきま~す♪
 
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…すごい。太い茎の部分までとーっても柔らか。
そして、味にクセというか雑味がなく、優しい甘さを感じます。佐藤さんのお子さんが、これで葉物野菜を克服したというのも納得のおいしさです。

中野さん 春の植物って、苦みのあるもの、香りの強いものが多いですよね。ふきのとうとか、ギョウジャニンニクとか。一方、この雪割りなばなは、葉物特有の青臭さもありません。今時期になると、周囲の友人たちから待ってました!とばかりに売ってくれと連絡がきます。

―それはやはり、雪割りなばながおいしいからこそ、ですよね。

中野さん 栽培を始めて、まずは地元で食べてもらいたい、定着してほしいと思って、市内の飲食店で使ってもらえないか働きかけをしたのです。一番反応してくれたのがJR滝川駅近くの「欧風居酒屋ボン・ビヴァン※」です。オムレツに入れたり、パスタの具材にしたり。他にも和食、パン屋、そしてアイスクリームにも使われるようになりました。それから、学校給食で採用されましたね。「ふるさと給食」として、テレビでも紹介されたのですよ。

※ボン・ビヴァンは残念ながら2022年9月に閉店しました。
 
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―給食を通じて、子供たちの思い出に残る「ふるさとの味」へと飛躍したのですね。栽培のご苦労というか、工夫をしていることなどはありますか。

中野さん 化学肥料を控え、発酵堆肥を入れて、うまくpHを管理しながらやっています。肥料を過剰に与えてしまって、雪割りなばなの中に含まれる硝酸態窒素(生育に必要な窒素分)の量が多くなるほど、ビタミンや糖度が低下してしまうことがデータでもわかっています。特に種をまく前の、秋の土づくりは大切ですね。うちの畑では、ここ数年、雪割りなばなの前作にてライ麦を植えていて、雪割りなばなの種をまく2~3週間前に、肥料として畑にすき込んでいます。
 
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―おいしい野菜は、よい土、元気な土から生まれるということですね。

中野さん はい。おまけに、雪割りなばなを一度作付けした場所は、その後6年間は他のものを栽培するなどして間を空ける必要があります。

―え。6年間も!

中野さん しかも、2度目まではいけるけれど、3度目になるとまともに生育しません。毎年、栽培する場所を変える手間はかかりますが、その分、いいものができるとホッとします。

―収穫作業は普段、何時頃に行っているのですか。

中野さん 気温が上がる前に行っています。今の時期だと、晴れの日は朝6時ごろですね。ハウス内が氷点下になるくらい寒い日には、なばなは凍ってしまい、気温が上がって氷が解けるまで収穫はできません。氷の重みで垂れていた葉が解けてピン!と立つ瞬間の様子は、何だかかわいいですよ。ただ、待っていた分、解けてからの作業は大忙しです。30パック詰めの段ボールで4~5箱になるくらいの量を一日に収穫していますが、とにかく鮮度を保つため、収穫後の袋詰めも寒い中で行っています。
 
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―まだ朝は氷点下まで冷え込みます。寒い中で大変な作業ですね。

中野さん もの好きじゃないと作れません(笑)。でも、春真っ先に収穫する野菜ですから、道内では競争相手となる産地もありません。それに、この時期は害虫がいないので、無農薬で栽培しています。暖房を使っていないため燃料費はかからないという利点もあります。そして何より、人に喜ばれる野菜を作るという喜びを、家族で分かち合う。そんな幸せを感じながら取り組んでいます。お金には替えがたい価値がそこにありますね。

―おいしい「食」は、人に元気と幸福感を与えてくれます。そんな「食」を生産している農家さんには、本当に頭が下がります。
 
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中野さん これは今朝、収穫した株です。カットした部分の横から、脇芽が出てきています。これが20日くらいすると、収穫できる大きさまで成長します。

―わ、すごい成長力。驚きです。
 
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〔すでに脇芽が育ち始めている株も〕
中野さん 本当は、大勢の方が菜の花を見に滝川を訪れる5月下旬に出荷できるといいのですが、ちょうど田植えの繁忙期とぶつかってしまうのです。なので、出荷は5月の連休くらいまで。無理するのではなく、続けられる範囲でしっかり取り組んでいくことを考えたいですね。

ちなみに…と中野さん。5月に菜の花が咲き誇る(予定の)丘陵地の近くで、木を剪定して景観を整えたり、お仲間とウッドデッキでも作ろうか?なんてお話をしているのだそう。
また、冬場はスキーの指導員をしていてゲレンデで過ごす時間が多いとか、後を継いだ息子さんのことを「いろいろ経験を積んでいる最中だけどね…」と嬉しそうにお話されているご様子がとても印象的でした。
言葉のひとつひとつが、農業への、そして暮らしへのわくわく感にあふれている中野さん。
これからもぜひ、わたしたちの食卓にも届くよう、おいしい雪割りなばなをつくってくださいね!
 

買うならここ、菜の花館。レシピもあります。

いや~それにしても、雪割りなばなのお浸し、おいしかったなぁ。家族にも食べさせたい。

購入するならやっぱりここでしょ。
ということで、先ほどご紹介したJAたきかわ農産物直売所「菜の花館」にお邪魔しました。
滝川市郊外の国道12号沿い、ホクレンのガソリンスタンドの向かいにありますよ。

店内に入ると…滝川の特産品がたくさん並んでいます。
あら、滝川のリンゴ。おいしそう。(と、すぐ目移りする…)
 
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で、雪割りなばなはどこかな~と見回したところ、なんと。
レジ前の一番目立つ場所にどーんと陳列されているではありませんか。(いわゆるセンターってヤツ??)
 
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お店の方によると、例年、初出荷を待っていたかのように雪割りなばなを求めるお客さんもやって来るのだそうで、中には札幌から買いに来たり、まとめて10束お買い上げ…なんて方もいるとのこと!
そうだよね、春一番の地物野菜だし、何よりおいしいしね…と納得。
で、ワタクシは、この「そらち・デ・ビュー」のスタッフへのお土産を含め、3束購入!
それぞれ自宅で、雪割りなばなをおいしくいただきました。
パスタの具材にしたり…
 
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チーズと一緒に、オムレツに入れたり。
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とても鮮やかな緑色が映えて、見た目にも春らしいお料理になりました。
菜の花館ではレシピを完備!気になったメニューがあれば、レシピをいただくこともできますよ。
 
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JAたきかわ農産物直売所 菜の花館
住所 滝川市滝の川西8丁目1-30
電話 0125-74-5510
営業時間など詳しくは、JAたきかわのホームページをご確認ください。
https://www.ja-takikawa.com/chokubai.html

余談ですが、雪割りなばなを食べた日の夜。
何と。雪割りなばなの肉巻きを一生懸命作っている夢を見ました。
夢にまで出てくるなんて、冬の間、どんだけ地物野菜に飢えていたんでしょうね。
まぁ、雪割りなばなは、何度でも食べたくなるくらい美味しかった!ってことで(笑)

「そらち野菜ハンドブック」が気になった方は、こちらをチェック。
雪割りなばなをはじめ、おいしい空知野菜、たくさん食べてくださいね~
https://sorachi-de-view.com/sorachi/esorachi_pamphlet1_download
 

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