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そして雨竜沼湿原へ 第2回 雨竜沼湿原のススメ

雨竜沼湿原とは

こんにちは!
雨竜町地域おこし協力隊の長瀬です。
今回は雨竜沼湿原についてご紹介します。

雨竜沼湿原とは、雨竜町が誇る観光地で、山地湿原の中では道内で最大の高層湿原です。余談ですが、高層湿原というのは高地にある湿原ということではないことを今しがた知りました。たった今得た知識をドヤ顔で解説するのもおこがましいので、興味がある方はネット等でお調べください。

さて、雨竜沼湿原は7月3日に山開きし、既に多くの方にお越しいただいております。昨年は7月初旬に町道の土砂崩れが発生し、そのままシーズンオフとなってしまいました。激甚化する自然災害に負けないよう、今年こそは晩秋まで何事もないように祈っています。

雨竜沼湿原は『北海道の尾瀬』という別名の通り、豊かな自然と高層湿原ならではの植生・地形で訪れる者を魅了し続けています。観光地ではありますが、アプローチにはある程度の装備が必要で、湿原を一望する展望台まで行く行程では往復で5~6時間はかかります。少なくとも一般の方が普段着に普段履きの靴で軽く登れるほど楽な場所ではありません。そんな場所だからこそ、観光客が殺到せず秘境としての価値を保っていられるのでしょう。

折しも8月初旬に2つのTV番組で雨竜沼湿原を紹介していただき、お盆前に多くのお問い合わせをいただきました。雨竜沼湿原を多くの方に知っていただきたい反面、観光地化しすぎてせっかくの自然が破壊されてしまうことを危惧しなければいけないのがとても悩ましいです。この記事を読んで興味を持ってもらった皆さんにはぜひ雨竜沼湿原までお越しいただきたいのと同時に、環境保全へのご理解・ご協力をいただけるようお願いします。
 
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ハイキング?いいえ登山です

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第1回でも書かせてもらったとおり、15年ほど前に一度だけ雨竜沼湿原に行ったことがあります。当然今よりも15歳若く、体力的にもピークに近かったはず。今はもう体力的にも身体能力的にも衰えは顕著です。先日実家近くの樽前山に登ってきましたが、交換レンズなどフル装備の荷物が結構な負担になりました。今回はレンズをいくつも持って行きたいのを我慢して、最低限の装備に留めます。

登った当日は7月中旬にも関わらずそれほど暑くなく、薄い雲はかかっていますが雨の心配はないという登山をするにも花の撮影をするにも絶好の天候でした。

ゲートパークを出発し、あまり勾配がない砂利道をしばらく歩くと渓谷第一吊橋に到着します。ここからが登山道の開始です。力を入れて登りつつ、時には下りながら進みます。岩肌や足場がぬかるんでいることもあり、滑らないよう集中しながらの登りで体力を奪われます。しばらく進むと、白竜の滝近くの分岐に着きます。左に進むと登山道の続きで滝を上から俯瞰する眺めに。右に進むと滝を下から眺望できます。

白竜の滝展望台のベンチで一休みし、さらに進んでいくと渓谷第二吊橋が見えてきます。吊橋を渡ると、目の前に壁のような坂が現れます。
最大の難所と言われる険竜坂です。

ここの斜度がどのくらいあるのかを地図で推算したところ、坂の開始から100mの登りで平均15度となっています。最もきつい高低差50mの場所では30度を超える計算になりました。実際に30度の坂を見てみると、体感ほぼ崖です。多くの方が登ったことがあるだろう道内のロープウェイだと、藻岩山は17度前後で函館山は20度前後です。ちなみに大倉山のジャンプ台が30度弱でした。

そんな岩場をよじ登るように進んでいくと、一気に高度が上がり景色が一変します。息も絶え絶えで険竜坂を何とか登り切った後は、多少のアップダウンを繰り返しながら水場に到着します。マイナスイオンを感じながら休むもよし、湧水を味わうもよしの休憩スポットです。(水質調査では問題がないようですが、あくまで飲水は自己責任にて)

水場からしばらく歩いた後、徐々に湿原の雰囲気が近づいてきて徐々にテンションが上がってきます。ようやくたどり着いた湿原手前の靴洗い場で靴底を洗い、いよいよ湿原の入り口です。

風薫る湿原へ

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汗で濡れた服では少し肌寒く感じてしまうほどの心地よい湿原の風を感じながら、すっと疲れが抜けていくような感覚になりました。

視界がパッと開けて、目の前には遠いような近いような場所に暑寒の山並みを見ることができるようになります。普通の登山は頂上に到達するまでの過程を楽しむものであり、実際に頂上に到達した後はその場からの眺めを楽しむくらいのことしかできません。あとは頂上までたどり着いたという達成感を得るのが主の目的になるでしょう。雨竜沼湿原の場合は、登り切って湿原に到着してからが本番です。

まずは湿原テラスで一休みします。この日も数名の先客が昼食をとりながら休んでいました。

休憩もそこそこに、さっそく木道へと足を向けます。少し進んだところで左右に分岐するポイントがありますが、この先は一方通行になっているので左側に進みます。周囲3kmに及ぶ木道は、常に時計回りで周回することが混雑回避のための対策になります。左に進路をとり、改めて右を見ても左を見ても、前を向いても後ろを振り返っても絶景です。

後述しますが、かつて雨竜沼湿原を代表する花の一つであるエゾカンゾウ(ゼンテイカ)は当たり年には湿原を覆いつくすかのごとく咲いていたそうです。ここ数年で野生動物の食害があり、ピーク時の群生は見られなくなるかもしれません。ただ、花が咲き誇っていなくとも、雨竜沼湿原の価値は変わらないと自信を持って言えます。

鳥の鳴き声と薫風の葉擦れの音、わずかに聞こえる登山者の感嘆の声。
風が凪いだ時に見られる池塘の水鏡。
湿原をしっとりと主張しすぎずに彩る高山の花々。
こればかりは登り切った人にしか体験できない空間です。

木道の約半分を歩いたあたりで、また分岐にぶつかります。
 
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この写真では右が今まで歩いてきた木道で左がその続きですが、今回は雨竜沼湿原展望台まで足を運ぶので手前側に進路をとります。湿原の平坦な木道に慣れた後の登りなので、勾配はそれほどではなくてもへこたれそうになります。険竜坂よりはマシだと自分に言い聞かせて、最後の力を使って登り切ります。

ようやくたどり着いた湿原展望台からの眺めについては、あえて何も書きません。ここまでの記事を読んでいただいた皆さんには、ぜひその場で眺望を体感していただきたいと思います。さらに余裕がある方は、この先一時間半ほど登ると南暑寒岳の頂上まで到達することができます。

展望台での眺めを堪能し、そのまま木道まで戻って下山しました。途中きつかった険竜坂は、下りでも注意が必要な難所です。足を滑らせて怪我をするだけならまだ不幸中の幸いですみますが、登山道から滑落なんてことになれば場合によっては命に関わります。登山は頂上まで登ることではなく、無事に下りてくることが最終目的だと改めて考えつつ、なんとか無事に下山することができました。

写真の出来はというと、とにかく撮りまくったおかげで満足できる写真が数枚撮影できました。それでも、今回掲載した写真では雨竜沼湿原の魅力が半分伝わるかどうかでしょう。

8月にはタチギボウシが満開になり、9月には花紅葉が見られます。10月初旬には登山道が閉鎖されると考えられますので、お越しの際はお早めに。

雨竜沼湿原の今

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雨竜沼湿原も年々環境が変わりつつあります。ヒグマや鹿などの野生生物による高山植物に対する食害や、地球温暖化などによる池塘の変化など様々なファクターから問題が発生しています。こういった事象は自然界ではいつでも起こりうることで、人間には進行を止めることはできないでしょうし、無理に止めようとすること自体が自然への冒涜かもしれません。それでも、自分の手の届く範囲では環境に対して配慮したいと思いました。

今回の往復では水と思われる液体が入ったペットボトルが一つ登山道に落ちていました。誰かが捨てていったとは考えたくないので、おそらく落としてしまったものだと思います。ありがたいことに他にはゴミ一つなかったのも、皆さんの意識の高さのおかげであると感謝の思いでいっぱいです。

ありのままの雨竜沼湿原を守るために、今後もご協力いただけるよう願いながらこの記事を締めさせていただきます。ぜひ、雨竜沼湿原で非日常の空間を体験してください!
 
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