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【ソラチコーヒー 14杯目】 まちの魅力再発見のソラチコーヒー

おいしいコーヒーのある日々を通じて、空知の魅力をゆる~く発信するソラチコーヒー。
自分で淹れて、おうちでのんびり楽しむコーヒーももちろん美味しいですが、プロの淹れる極上の一杯は、新たな発見ひらめきを与えてくれることも多いと思います。
空知はこれから冬を迎え、雪とコーヒーがよく似合う季節。冷え切った体をほっこり暖めるコーヒーを探す旅にはいいシーズンです。今回は赤平市にあるCafé Luft(ルフト)を訪問しました。
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赤平市は、札幌から高速道路の利用で約1時間15分、鉄道利用でも約1時間半でのアクセスです。 「札幌~富良野」休日ドライブに行こうとすると、高速から降りた後、ちょうどカフェで休憩したくなる!?ような位置にあります。(※個人の感想です)
そして、赤平はかつて炭鉱で栄えたまちとして炭鉱遺産を次世代に伝える取組をしながら、木製品や革製品、スーツケースなどを製造する「ものづくりのまち」として発展を続けています。

居心地のよいCafé Luftの空気

2019年3月にオープンしたCafé Luftは、赤平駅前から徒歩10分ほどの商店街のはずれにあります。駅前の通り沿いの立地ですが、中に入るととても静かで落ち着いた雰囲気。のんびりした空気と時間が流れています。「Luft」とはドイツ語で「空気」や「空間」、「空」を意味するそうです。
切り盛りするのは、コーヒー係(←公式HPから引用)の佐藤敏文さんと、メインパティシエの奥様・亜由美さんのお二人。
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うま~く分業している様子を、ホームページのつぶやきなどからも事前に拝見していましたが、オープンキッチン内でなんとなく”持ち場”も固定している感じが微笑ましかったです。
分業という効率性の視点だけでなく、この距離感ってお店の雰囲気にも大事なことだと思うんです。
 Café Luft ホームページ
それから忘れてはいけないのが、お店の場所が赤平の炭鉱の歴史を象徴する日本遺産構成文化財の「旧住友赤平炭鉱立坑櫓(たてこうやぐら)」「炭鉱遺産ガイダンス施設」のすぐ近くにあることです。
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炭鉱のことを学びに赤平に来て、帰りに立ち寄ってコーヒーとスイーツを…なんてお客様も結構いらっしゃるそうです。幼いころから赤平で過ごしている敏文さんのお話や炭鉱遺産をモチーフにした限定販売クッキーなど、「炭鉱で栄えたまち」のカフェならではの時間や味を楽しむことができますね。

オリジナルブレンドでほっとひと息

そんな Café Luftのゆったり感のある空気も味わいたく、ランチの時間帯が一段落する午後にお邪魔しました。
お店は普通の民家をリノベーションしたそうですが、部屋の中はとてもきれいだったので、床の張替えなど最小限のリフォームだけで済んだそうです。カウンターの中の窓から外の往来を眺めながらドリップする様子を見て、ちょうどこの場所でコーヒーを淹れるために付けたのではないかと思うほど、この窓がゆるやかに店内と外を繋いでくれているように感じました。
残念ながらカウンター席は感染予防対策のため今は利用休止中だったので、午後の日差しが暖かい窓際の席で、オリジナルブレンドを注文して待ちます。
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「いつも取材というと、妻の作るスイーツのほうが多いんです。空知はおいしいコーヒーを出すお店がたくさんあるから、うちのコーヒーじゃ…(記事にするなんて)ダメじゃないですか?」
と謙遜する敏文さんですが、空知管内をはじめいろんなお店のコーヒーを飲んだり、豆を買ったりするうちにコーヒーの奥深さにハマっていったそうです。そして、奥様の亜由美さんがこのお店をオープンする際、会社を退職しCafé Luftではコーヒー係(飲み物担当)をすることになりました。
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―カップにも描かれているルフトのマークは?
「花形のフルーツケーキをモチーフに、真ん中のところにコーヒー豆が描かれています。その右下はLuftの「L」、さらにLの先にケーキをつけています。」
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「コーヒー豆」のデザインは、言われないと気づきませんでした。まるで隠しアイテムのように、こっそりコーヒー豆をマークに入れている遊び心が粋ですね。

日々の暮らしのそばにあるコーヒー

ではさっそくコーヒーをいただきましょう。なぜかスイーツ担当の亜由美さんが作る窯出しプリン(別腹認定済?!)も注文しちゃっていますが…(汗)。
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たっぷり注いでいただいたコーヒーは、丁寧にペーパードリップしているので、雑味がなく、コクがあるのにスッキリしていて、とろけるプリンとの組み合わせなら、ブラックでゴクゴク飲めちゃいます。

敏文さんにこだわりを伺います。
―オリジナルブレンドはどんな豆をお使いですか?
「ブラジル、コロンビア、エチオピアのブレンドで焙煎を強め(深め)にしています。
もともとエスプレッソ用で使う豆を、若干レギュラーコーヒー寄りに焙煎(中深煎り)してもらっているんです。レギュラーコーヒーよりは濃いけど、さっぱり、スッキリ飲めるというギリギリのラインを攻めています(笑)。」


―確かに苦みも酸味もマイルドに感じました。その辺の焙煎度合いが絶妙なんですね。
「思いっきり苦いとか、思いっきり酸っぱいとかは好きじゃないので、ミディアムローストのちょっと下くらいにしています。カフェラテに使うエスプレッソにも、ドリップするブレンドコーヒーにも両方使える焙煎度合いです。」

―マグカップになみなみと注いでいただいて、たっぷり味わいたい派には嬉しかったです。
「来ていただいたお客様に、どれだけのんびりしてもらえるかというのがステイタスだと思っているので、たっぷり淹れて、ゴクゴク飲んでいただいて、さらに冷めても酸味が出てこない味にしているんです。」

この絶妙な塩梅を、いつ来ても同じ状態で提供したいので、あえて豆の焙煎までは信頼できる専門業者に依頼しているそうです。また、コーヒー類のおかわりは200円で提供しているというのも嬉しいサービスです。2杯、3杯おかわりして、2~3時間ゆっっっくり過ごしていくお客様も多いとのこと。
いつものコーヒーを飲みながら過ごすゆっくりとした時間を大切にしたい。敏文さんのそんな思いが詰まった1杯。まさに赤平の日々の暮らしのそばにあるコーヒーですね。

コーヒーを引き立てる美味しいスイーツたち

今回はコーヒーが主役ですが、亜由美さんが作るスイーツも絶品です。取材当日は、人気のシフォンケーキは完売だったのですが、どれも美味しそうなタルト類やプリンが、かわいいショーケースに並びます。コーヒー1杯にも、テイクアウトにもちょうどいい大きさです。
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そして、店内で飲み物を注文すると、日替わりでひとくちデザートが付くという嬉しいサービスがあるんです!この日はマロンガナッシュタルトを1/4サイズで⤴
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ぱっと見、色合いが栗ようかん的ですが、栗のホロっと感、チョコレートのとろける感、コーンパフのサクサク感、タルト生地のしっとり感の4つの食感と濃厚な味が、スッキリしたコーヒーによく合います。
また、焼き菓子も豊富で、ドリップバッグとのセットで赤平市のふるさと納税返礼品にもなっています。
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炭鉱で栄えたまちのCaféだからできること

赤平で生まれ育った敏文さん、お母様が赤平出身で幼い頃から赤平に来ることも多かった亜由美さんですが、カフェに来店する炭鉱ファンの皆さんにも刺激をうけて、最近は改めて赤平の炭鉱の歴史についても学んでいるそうです。
そして、「旧産炭地のイメージを生かし、お土産になるお菓子を!」と試行錯誤を繰り返した結果、今年の夏から期間限定の「炭鉱クッキー缶」を販売しています。取材時は、第2弾の秋バージョンの予約最終日だったため、迷わず予約しました(^^♪
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本日(11月18日)にお渡し開始とのことなので、これから送られてくるのが楽しみです。
好評だった夏バージョンに続いて今回も、赤平のランドマーク的存在の立坑をモチーフにしたクッキーをはじめ、亜由美さんおススメの季節の焼き菓子が盛り沢山!また缶のデザインは、赤平在住のデザイナー・大倉さんが秋の立坑をバックにした炭坑夫を描いています。
大倉さんについては以下の記事もどうぞ。
そらち・デ・ビュー【てつこの部屋】 ~VOL14炭鉱マンと炭鉄港女子(赤平前編)~
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この秋バージョンのクッキーにはもう一つストーリーがあります。
イチョウとモミジ(でしょうか)の葉の形のクッキーは、2018年に80年の歴史に幕を閉じた市内のパン屋さん・山平菓子舗から譲り受けた抜き型を使っています。小中学校の給食用パンを製造し、市民や炭鉱労働者からもこよなく愛された名店の遺産です。亜由美さんによると、山平菓子舗では、羊羹などの和菓子の型抜きとしてつかっていたのではないかとのこと。
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赤平の小中学生の思い出のパン、炭鉱で働く人のためにパンに塩分を多めに入れたという逸話も残るまちのパン屋さんの思いも、業種は違えどCafé Luftにちゃんと息づいているんですね。だから、店内の「空気」は、どこかまちの空気と繋がっているように感じたのかもしれません。
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まちの魅力再発見を共有できるコーヒー

赤平で生まれ育った敏文さんですが、お店を始めてから、炭鉱という地域資源の価値に気づいたといいます。
(お店を始める前までは) 祖父が市内の豊里炭鉱に働いていたというくらいしか、炭鉱に対する関わりや知識はなかったんです。このお店を開き、炭鉱ファンのお客様が来るようになって、自分ももっと知識をつけないといけないと感じて勉強するうちに、赤平ってすごいんだなと改めて思うようになりました。」

―どんなところがすごいと?
「まちのあらゆるところに、(炭鉱の)名残が残っているんです。例えば、同級生の家にある池が実は、石炭の沈殿分離装置だったとか…。そういうことに気づいてからは、まちのいろんなものが宝に見えてきました。地域資源の再発見というのでしょうか。ここ(赤平)もいいな、すごいなと。」

―そういえば駅前の通りにも、炭鉱のまちの賑わいを感じるような気になるお店や建物がいくつかありました。
「教科書に絶対書かれないような、当時の生活を垣間見るのも面白いんです。」

そんな地元再発見の感動を、敏文さんが淹れるコーヒーとともに共有できる。この店の心地よい「空気」は、そういうところにもあるんだなと思いました。2杯、3杯と、おかわりもしたくなります。
コーヒーは嗜好品なので飲まないと生きていけないものではありません。でもLuftのコーヒーは、赤平の人たち、炭鉱のまちを愛する人たちの暮らしを彩る特別な飲み物になっているんじゃないかなと思えてきました。

そして余韻を楽しむ

取材を終えた後、改めて赤平のまちを鳥瞰してみたくなったので、市内を見下ろす777段の階段がある「ズリ山」に向かいました。「ズリ」とは石炭採掘時に選別され生じた捨て石のこと。この石が積み上げられた山をズリ山といいます。
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コーヒーの余韻とともに赤平の空気を胸いっぱいに吸い込みながら階段を上ると、遠くに見える立坑が、そして赤平のまちが、また違った輝きを放っているように見えてきました。

かつて炭鉱で栄えたまち・赤平の歴史を味わいながら、淹れたてのコーヒーをたっぷり楽しむ―それもソラチコーヒー
ドイツ語で「空気」や「空間」などを意味するというLuftは、いままで気づかなかった空知の魅力を再発見できる素敵な空間でした。これからの季節、窓の外の雪を眺めながらコーヒー係の敏文さんと、ゆっくり、のんびり赤平の魅力について語ってみてはいかがでしょうか。

そうそう、18時間かけてゆっくり、のんびり水出しするアイスコーヒーもオススメです。
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