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日本最北の円筒分水工?そもそも「円筒分水工」って何だ?

空知管内は北海道で生産されるお米の約半数を生産する、一大水田地帯です。
そんな水田地帯の空知も7月を迎え、水田には稲を育てるための水が湛えられております。
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一面緑の絨毯です。空知の米、至宝の愛。

稲を育てるためには多くの水を必要とします。この水を確保するために、ダムや頭首工(とうしゅこう)などの施設から取水し、幹線用水路を経由し小用水路を通って水田まで水が供給されます。
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空知平野を潤す北海幹線用水路。赤平市から南幌町までの全長80kmは、農業専用水路としては日本一の長さを誇る。(北海道民全体の宝物として、「北海道遺産」に認定!)
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小用水路の例。水田へと向かう最後の道。長かった水の旅もここで終わりです。

このように、稲を育てるためには多大な労力をかけて水を確保する必要があり、その確保した水を公正かつ・公平に配分する必要があります。

今でこそ電気制御の水門や流量計が設置されたことで、適切な水配分が可能となり、その確認も明白ですが、過去には村落間や集落間での「水争い」と呼ばれる公正・公平な水配分を求めた争いが頻発しておりました。
 

農業土木界の超絶技巧「円筒分水工」って何だ?

「水争い」は集落全員の生死をかけた争いであり、村同士の激突にまで発展し、不幸にも犠牲者を出してしまった地域もありました。

公正な水配分と、それが誰の目から見ても明らかであることの証明は、農民たちの悲願でもあったのです。
近畿農政局のHPリンク

この難題を解決するために考案された技術がそう!みなさんご存じ「円筒分水工」です。
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円筒分水工の例。これは宮城県石巻市にある前谷地(まえやち)円筒三方分水工です。360°均等に越流する姿が美しい。まさに機能美。

ご存じない方のために原理を説明すると、逆サイホン工に円筒状の吐水槽を設け、同心円状に越流させることで水を均等・厳格に配分することができ、その公平性が「誰の目から見ても明らか」な施設となります。この技術で数百年に及んだ水争いを終結させたものもあります。
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つたない図面で恐縮です。
 

北海道にもあった!? 円筒分水工

そんな円筒分水工が、北海道にもあるとの情報を聞きつけ向かった先は、南空知の栗山町です。

「円筒分水.com」によれば、北海道唯一であり、日本最北です。
(ダムマニアがいるのは知っていましたが、円筒分水工マニアも少数だがいた!)

ドライブがてら行ってきましたよ~。これだ!
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田園風景に鎮座するその姿は・・・まさに「円筒」だ!資料によれば昭和42年に設置されたとのこと。

近くに寄っていくと・・・
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底からドバドバと水が溢れています!
水面が脈打ち、まるで生きているかのようです。音もすごいので近くにいくと少し怖いです。

構造を観察してみましょう。そこには、各種文献や写真で見た越流施設が!・・・越流施設が・・・・・
無い!。どこにも無いぞ!!オリフィスゲートが一個あるだけだ!!
 

ガーン!ショック。これは「円筒分水工」ではなかった・・・。

実はこの施設は構造上、「円筒分水工」ではありませんでした。流出口が一か所なので、正確には「円筒状の逆サイホン吐水槽」になるかと・・・。しかし、普通(経済的に)に作れば四角くなるはずの施設を、わざわざ円筒状で製作した理由が、建設当時にはあったのだと思います。

(専門的になりますが、コンクリートを打設する際に、四角く型枠を組む方が円筒状に組むよりも容易ですし、鉄筋の曲げ加工もしなくてもよいので経済的です。なにかのメリットがなければ円筒状の施設を製作する必要性は無いと思います。)

今となってはその理由は分からずじまいですが、そうせざるを得なかった当時の事情があったのだと思います。

みなさんの周りにもふと見渡してみれば用水路があると思います。今度見かけた際には、公正・公平な水配分を求めた農民、そしてそれを知恵と工夫で成し遂げた技術者がいた。このことをふと思い出していただければ、秋に食べる新米はいつもより少し、美味しく感じられるかもしれませんよ。

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