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【好評連載】笹川リョータの床屋放浪記【赤平市・前編】

どうも~みなさんこんにちは~笹川リョータですよ~っと・・・
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んっ?
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よっこらしょ・・・
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なんだ、ただの赤いビラかあ。

ん?

赤いビラ・・・

赤ビラ・・・

そうだ。
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相当こじつけですが

というわけで、前回の散髪から1ヵ月がたち、中空知は「赤平市」にやってきたリョータ。

*****

▼前回の散髪の様子はこちら。
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▼赤平駅前の「井上理容院」を訪れました。
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▼店長の井上信重さん。
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こんにちは。今日はよろしくお願いします。
 
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はい、よろしくお願いします。どうする?丸刈りにする?
 
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話が急。
 
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▲3番目に「丸刈り」が。オーダーする人が多いのでしょうか・・・
そして南幌町で登場した「アイパー」がここにも。
「コールド」は「コールドパーマ」の略で、パーマ液が冷たいので、こう呼ぶのだそうです。
 
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え~っと、ぼくがいきなり丸刈りにすると、ちょっと色々な誤解を受けてしまいそうなので、もう少し残していただいてもいいでしょうか・・・

 

炭鉱があった頃はすごかった

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井上さんは、失礼ですが、今、おいくつですか?
 
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78歳だね。
 
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※井上さんの奥さま。顔出しは恥ずかしいとのことでこのような出演にさせていただきます。
いや、79歳でしょ。
 
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まあ、大した違いじゃないっしょ(笑)。もうすぐ80歳だね。
 
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え~!めちゃくちゃお若いですね!ひげもオシャレです。今は、奥さまと、このお店をされているんですか。
 
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そう。昔は従業員もたくさんいたんだけどね。今は、この子だけ。あとはかみさんと、3人でやっているよ。
 
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▲従業員の梶さん。赤平出身だそうです。
 
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井上さんは赤平出身なんですか?
 
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いや、生まれてから中学までは置戸町。そこから旭川の理容学校に行って、卒業してから、岩見沢の理容室で働いたんだ。札幌や東京で働いていたこともあるよ。
 
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東京!カリスマ理容師ですね。どうして東京で働くことになったんですか?
 
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なんとなく。行ってみたいな~と思ってね。当時、仕事はどこに行ってもあったからね。
 
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なんという軽やかさ・・・これが「手に職がある」ということか。

生まれてこのかた、札幌と岩見沢以外に住んだことがない人生を送ってきたので、めちゃくちゃうらやましいです。

 
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それから、芦別市で理容をやっていた親戚に、「赤平にお店があるけどやらないか」って言われて、開業したんだ。昭和38年、23歳の時だね。
 
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23歳で自分のお店を持ったんですね!すごい!
 
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時代が良かったからね。儲かったよ~。でも、そのお金もぜ~んぶ使って遊んでいたね(笑)そのくらい、街全体に活気があったんだよね。

そこにある時計の写真は、昭和62~3年くらいかな。だいたい30年前だね。

 
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▲当時のお店の様子が記念に残っていました。
 
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お客さんも、従業員も、たくさんいらっしゃいますね!
 
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一番多い時で、従業員が6人くらいはいいたね。赤平の散髪屋も60軒くらいあったかなあ。今は20軒くらいまで減ってしまったね。炭鉱があった頃は、何をやってもすごかったね。
 
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▲昭和63年頃、今の場所に移転後のお店の写真。立派な門松!
 
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朝の8時半から夜22時くらいまで営業していたからね。もう「疲れた」どころじゃないよ(笑)でも、お客さんがズラーって並んで待っているから、閉めるわけにはいかなかったんだよね。

住友(赤平炭鉱)の会計の日(給料日)は、ダンボールを置いて、そこにお金を入れていたね。丼勘定ならぬ、ダンボール勘定(笑)

 
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会計の日、毎月13日ね。そこの駅前通りの夜なんて、賑やかで本当にすごかったんですよ。商店街の道路の幅いっぱいに、酔っ払いがそぞろ歩いて、ススキノに引けをとらないくらい。それに比べたら、今なんて、昼間でも全然歩いてる人がいないですもんね。
 
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▲赤平市には、昭和13年から昭和48年まで「北炭赤間炭鉱」、昭和13年から平成6年まで「住友赤平炭鉱」が操業していました。最盛期の赤平市の人口は5万9千人(S35)にものぼり、街は活気にあふれていました。
 
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鉱員さんは手取りがいいから、「宵越しのお金は持たない」みたいな人も多かったからね。ここに、よく知っているお客さんがいるよ。ね。
 
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!!!
 
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なんと、偶然にも、隣で髪を切っていたお客さんが、元「住友赤平炭鉱」の鉱員さんでした。

床屋取材をいったん中断して、お話を聞かせていただきました。
 
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▲Oさん。炭鉱街にあった床屋さんがなくなって以来、2ヶ月に1回くらいのペースでこちらに通っているそうです。
 
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おれは寿都の生まれなんだけど、赤平に来る前は茅沼(泊村茅沼炭鉱)に3年いて、茅沼が閉山になってから、赤平に来たんだ。炭鉱は危険な仕事だから、毎回、生きて帰って来られるかわからない。だから、「無事帰って来た、よし飲むぞ」って、毎日飲んでいたね。一升瓶2~3本分くらい。
 
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飲む単位がすごい。
 
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そのまま寝ちゃって、飲み屋さんから出勤している人もよくいたよね(笑)
飲み屋の人もわかっているから、朝ご飯のおにぎり握ってくれてね。

 
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なるほど、街全体が一つの家族みたいだったんですね。
 
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そうだね。炭鉱夫は3交代制だったから、街が24時間ずっと動いていたよ。あの頃は、自分が人間じゃなくて「働く動物」みたいだと感じていたね。でも、仕事がきつくても、金取りはよかったから、家族を養えたんだよね。
 
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「働く動物」・・・今どきで言う「社畜」ですね。でも、Oさんの声はなんだか楽しそう。
 
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高度経済成長期で、とにかく移り変わりが激しくて、大変な時代だったよね。でも、これからの人の方が、ある意味では大変な気がするね。今の赤平は「寂しい」なんてもんじゃないよ。まるで死んでいるみたいに感じる。
 
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そういえば、昨年、住友赤平炭鉱の跡地に「炭鉱遺産ガイダンス施設」がオープンしましたが、どう思いますか?

※赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設についての記事はコチラ
ついにOPEN!!【赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設】
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せっかくなら、来てくれた人が「また行ってみたい」っていう施設になればいいね。いろんな写真や記録を集めても、見てくれる人がいないと。おれの家に飾っている石炭と同じで、「昔、これ掘ったんだよな~」って自己満足するだけじゃ、今の人に残っていかないからね。
 
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え、ちょっと待ってください。掘った石炭が家にあるんですか?
 
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うん、あるよ、玄関に。こ~んな立派なやつ。あんまりかっこいいから、こっそり持って帰ってきたんだ。
 
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それ、是非見たいです

 

突然のお宅訪問

というわけで、Oさんの自宅にある石炭を見せていただくことになりました。
 
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本当に突然のお願いにもかかわらず、快くOKをいただき、ありがとうございます!
 
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「あのオヤジ、口ばっかり」って言われたくないからね(笑)これが、おれが掘った石炭だよ。
 
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▲玄関に鎮座する石炭。本物です。
 
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お~かっこいい。なんだか観音様みたいですね。
 
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この赤平の地下に埋まっているのを、発破かけて、砕いて、ひたすら出していたのさ。こっちにもう一個あるよ。
 
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▲大きい石炭。抱かせてもらいました。
 
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ずっしりしていますね。そして、改めて見ると石炭って本当に黒いですね。黒の色が深いっていうか・・・
 
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そう、このあたりの石炭はカロリーが高かったからね。よく燃える、鉄を溶かす石炭だったんだよ。今でも、ここの下に、こういう石炭がたくさん埋まっているんだ。

※住友赤平炭鉱で採掘された石炭は室蘭港から石炭運搬車によって全国の関連する製鉄所などに運ばれ、使われていました。現在も7億5千万トン分もの石炭が、赤平の地下に埋まっているといわれています。
 
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7億5千万トン・・・ななおくごせんまんとん?
ええと、ぼくが約80キロ、つまり0.08トンだから・・・

 
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7億5千万トンということは、ぼくが93憶人分ってことか・・・
 
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余計わかりにくいな。
 
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▲石炭から石油へのエネルギー転換により、住友赤平炭鉱は、平成6年に閉山を迎えました。
 
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おれたち「昭和の人間」がいなくなってからも、その子供達が、赤平の炭鉱で働いた歴史を知って、引き継いでくれたら嬉しいね。
 
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激動の時代を生き抜いて来た方の言葉は、ずしりと響くものがある。本当に貴重なお話を伺うことができました。
 
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▲これも床屋さんで出会ったご縁。ありがとうございました!

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次回、井上理容室でのもう一つの出会い、そして、リョータが食べる、この季節にぴったりの「あの」料理とは・・・
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